日经社説 20141216 勝利の勢いを政策実現につなげよ
2014-12-16 17:13
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衆院の全議席が確定した。安倍晋三首相は今後の政権運営について記者会見で「引き続き、経済最優先で取り組んでいく」と強調した。勝利の美酒に酔っている余裕はいまの日本にはない。
首相は選挙結果を「予想をはるかに上回る国民の支持を得ることができた」と評した。10月の2閣僚辞任などのごたごたをリセットし、政権の推進力を回復したとの受け止めだ。
まず成長戦略を再起動
この勝利の勢いを政策実現につなげてもらいたいが、問題はどこへ進むかだ。首相自らがアベノミクス解散と銘打ったのだから、日本経済の再生を後回しにするという選択はあり得ない。
国民に信任されたアベノミクスも、個別の経済政策では的外れなものや手つかずのものがある。
重要なのは、第3の矢とされる成長戦略の迅速な再起動だ。突然の衆院解散によって国会で審議中だった国家戦略特区法改正案や女性活躍推進法案などが廃案になった。1月召集の通常国会では急いで成立させねばならない。
「規制改革は成長戦略の1丁目1番地である」と首相は繰り返してきた。昨日の記者会見でも「大胆な」との形容詞付きで規制を打ち砕くと力説した。来年4月に統一地方選があるからと支持団体の既得権益に配慮し、医療、農業、雇用といった「岩盤規制」の突破に二の足を踏んではならない。
環太平洋経済連携協定(TPP)交渉の早期妥結も重要だ。日本は米国とともに強い指導力を発揮すべきだろう。日本の立地競争力を高めるため、2015年度から着実に法人実効税率を引き下げる道筋もつくってもらいたい。
看板政策の地方創生では、職住接近が可能な地方の特性を生かして子育てなどのしやすい住環境をつくりたい。企業や働き手のUターン、Iターンの呼び水となる。
自民党と公明党の新たな連立合意には「個人消費と地方経済をテコ入れする景気対策を直ちに実施する」とある。地方創生に名を借りた安易なバラマキを14年度補正予算や15年度予算に潜り込ませる愚は避けたい。
経済の真の再生にはエネルギー確保の道筋を示すことも大事だ。安倍政権は安全が確認された原子力発電所の再稼働を進めると明言してきたが、将来のエネルギーのベストミックスに関して選挙公約では曖昧だった。原発再稼働のその先はどうなるのかまで見通せないと企業の不安は解消されない。
成長戦略と同時に忘れてならないのは、財政再建である。国と地方の借金は国内総生産(GDP)の2倍を超え、先進国で最悪の状態にある。
今回の衆院選で首相は消費増税を延期する一方で、20年度に国と地方の基礎的財政収支を黒字にする財政健全化目標は堅持し、そのための具体的な計画を15年夏までにつくると約束した。
内閣府の試算によれば、消費税率を10%に引き上げてもなお20年度の基礎的収支の黒字は達成できない。どの分野で、どれだけ歳出を削減するのか。10%からさらに消費税率を引き上げるのか。こうした具体策を明確にした、信頼に足る計画をつくるべきだ。
急を要するのは、社会保障制度の改革だ。高齢化で社会保障関係費は膨らみ続け、いまや国の一般会計予算の3割超を占める。
中韓と関係改善を
人口減に対応して少子化対策を充実するのは理解できる。だが、一定の所得や資産を持つ高齢者向けの給付を減らしたり、彼らに負担増を求めたりする「痛みを伴う改革」に尻込みしてはならない。
一部の格付け会社は日本国債の格付けを引き下げた。金融市場で政府の財政再建努力に疑問符がつけられ、日本国債に対する信認が揺らぐと、意図しない形で長期金利が上昇しかねないリスクを政府は肝に銘じてほしい。
外交・安保では基軸の日米同盟をどう深めるか。通常国会では集団的自衛権に関する憲法解釈の変更を踏まえた安保法制の整備が課題となる。国民の理解を得つつ進めてほしい。中韓など周辺国との関係改善も忘れてはならない。日中は11月に首脳会談が実現した。さらなる一歩に期待したい。
衆院選では沖縄の4選挙区すべてで与党候補が敗北した。米軍普天間基地の県内移設への県民の理解を得る努力を政権を挙げて取り組んでもらいたい。
自公の連立合意には「憲法改正に向けた国民的な議論を深める」とのくだりもあるが、国論を二分するような課題にはじっくり時間をかけたい。
首相は選挙結果を「予想をはるかに上回る国民の支持を得ることができた」と評した。10月の2閣僚辞任などのごたごたをリセットし、政権の推進力を回復したとの受け止めだ。
まず成長戦略を再起動
この勝利の勢いを政策実現につなげてもらいたいが、問題はどこへ進むかだ。首相自らがアベノミクス解散と銘打ったのだから、日本経済の再生を後回しにするという選択はあり得ない。
国民に信任されたアベノミクスも、個別の経済政策では的外れなものや手つかずのものがある。
重要なのは、第3の矢とされる成長戦略の迅速な再起動だ。突然の衆院解散によって国会で審議中だった国家戦略特区法改正案や女性活躍推進法案などが廃案になった。1月召集の通常国会では急いで成立させねばならない。
「規制改革は成長戦略の1丁目1番地である」と首相は繰り返してきた。昨日の記者会見でも「大胆な」との形容詞付きで規制を打ち砕くと力説した。来年4月に統一地方選があるからと支持団体の既得権益に配慮し、医療、農業、雇用といった「岩盤規制」の突破に二の足を踏んではならない。
環太平洋経済連携協定(TPP)交渉の早期妥結も重要だ。日本は米国とともに強い指導力を発揮すべきだろう。日本の立地競争力を高めるため、2015年度から着実に法人実効税率を引き下げる道筋もつくってもらいたい。
看板政策の地方創生では、職住接近が可能な地方の特性を生かして子育てなどのしやすい住環境をつくりたい。企業や働き手のUターン、Iターンの呼び水となる。
自民党と公明党の新たな連立合意には「個人消費と地方経済をテコ入れする景気対策を直ちに実施する」とある。地方創生に名を借りた安易なバラマキを14年度補正予算や15年度予算に潜り込ませる愚は避けたい。
経済の真の再生にはエネルギー確保の道筋を示すことも大事だ。安倍政権は安全が確認された原子力発電所の再稼働を進めると明言してきたが、将来のエネルギーのベストミックスに関して選挙公約では曖昧だった。原発再稼働のその先はどうなるのかまで見通せないと企業の不安は解消されない。
成長戦略と同時に忘れてならないのは、財政再建である。国と地方の借金は国内総生産(GDP)の2倍を超え、先進国で最悪の状態にある。
今回の衆院選で首相は消費増税を延期する一方で、20年度に国と地方の基礎的財政収支を黒字にする財政健全化目標は堅持し、そのための具体的な計画を15年夏までにつくると約束した。
内閣府の試算によれば、消費税率を10%に引き上げてもなお20年度の基礎的収支の黒字は達成できない。どの分野で、どれだけ歳出を削減するのか。10%からさらに消費税率を引き上げるのか。こうした具体策を明確にした、信頼に足る計画をつくるべきだ。
急を要するのは、社会保障制度の改革だ。高齢化で社会保障関係費は膨らみ続け、いまや国の一般会計予算の3割超を占める。
中韓と関係改善を
人口減に対応して少子化対策を充実するのは理解できる。だが、一定の所得や資産を持つ高齢者向けの給付を減らしたり、彼らに負担増を求めたりする「痛みを伴う改革」に尻込みしてはならない。
一部の格付け会社は日本国債の格付けを引き下げた。金融市場で政府の財政再建努力に疑問符がつけられ、日本国債に対する信認が揺らぐと、意図しない形で長期金利が上昇しかねないリスクを政府は肝に銘じてほしい。
外交・安保では基軸の日米同盟をどう深めるか。通常国会では集団的自衛権に関する憲法解釈の変更を踏まえた安保法制の整備が課題となる。国民の理解を得つつ進めてほしい。中韓など周辺国との関係改善も忘れてはならない。日中は11月に首脳会談が実現した。さらなる一歩に期待したい。
衆院選では沖縄の4選挙区すべてで与党候補が敗北した。米軍普天間基地の県内移設への県民の理解を得る努力を政権を挙げて取り組んでもらいたい。
自公の連立合意には「憲法改正に向けた国民的な議論を深める」とのくだりもあるが、国論を二分するような課題にはじっくり時間をかけたい。
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